記録誌「むらさきものがたり」のご紹介

「制作技術と材料の解明」の研究では、女子美術大学美術館所《近江八景模様小袖》の上部に見られる紫色で染めだされた雲あるいは霞のような模様の表現技法に着目し、その色材と絞り染技法を調査研究しています。

3年ほど前に草木工房の山崎和樹先生からひのはらムラサキプロジェクトの丸山様をご紹介いただき、本研究でひのはら在来ムラサキを使わせて頂いています。

その色は、驚くほどに澄んだ美しさを持つ「紫」です。檜原村の空気や水と共鳴しているかのような清々しさと透明感があり、このムラサキを手間ひまかけて守り、丁寧に育てていらっしゃる皆様の情熱のように真っ直ぐな色です。

この度、ムラサキ保存活動の軌跡を辿る記録誌が発行されました。地元の人たちの手によって栽培、継承し続けているムラサキをより多くの方に知っていただき、その素晴らしさと価値を共有したいという思い溢れる記録誌をぜひご覧ください。

この稀有な“ムラサキ”のかけがえのない価値に敬意を表すとともに、これからも未だ解明されていない染色技法の研究に真摯に取り組んで参りたいと思います。

【むらさきものがたり】2021年3月発行

女子美術大学染織文化資源研究所 研究員

荒 姿寿