#07 無形文化財西ノ内和紙とテキスタイルデザインとの研究・素材開発

那須楮のみを使用し、伝統的な製法で一枚ずつ手漉きされた希少かつ芸術性に優れた西ノ内紙。江戸時代、火災の際、井戸に投げ入れても字が滲まないとの理由で大福帳にも使用され、水戸藩の特産品として常陸大宮市の旧・山方町域で盛んに製造されていました。無形文化財保持者としてその技術を伝承されている菊池正氣氏に2019年よりご指導いただき、ご子息である菊池大輔氏のご協力により、強靭で保湿性の高い「紙衣」の特性を活かした様々なテキスタイル製品を開発する取り組みを行っています。
日本最大級の展示会 rooms40 にて展示発表
日本最大級の展示会 rooms40 にて展示発表(国立代々木競技場 第一体育館)2020年2月20日~22日
紙衣 かみこ
紙衣 かみこ
手漉きの和紙にこんにゃく糊を塗り乾燥させた後 石灰で煮る作業を繰り返す事で強く保温性に優れた布のような紙ができます。その強靭で柔らかな 和紙は100年以上も前から僧侶の法衣として常用されていました。西ノ内紙は絹のような細い那 須楮(常陸大宮産)を100%使用し、昔ながら の伝統技法で一枚ずつ丁寧に漉き上げた国内でも 大変珍しい和紙となっています。
絞り染 しぼりぞめ
絞り染 しぼりぞめ
天平の三纈(さんけち)と呼ばれる奈良時代の代表的な三種類の古代染色技法、夾纈(きょうけち) 纐纈(こうけち)、﨟纈(ろうけち)。その伝統的な技法の一つ夾纈と言われる絞り染めを用い、一枚ずつ表情の違う手漉きの和紙に合わせナチュラルな濃淡で染め上げました。力強くしなやかな和紙に柔らかなシルクオーガンジーを合わせた今までにない質感による布。全て手作業によるその布はそれぞれの素材が放つ美しい個性を響かせ伝統と今を繋ぎます。
無形文化財保持者 菊池正氣氏と茨城県常陸大宮市『紙のさと』にて
無形文化財保持者 菊池正氣氏と茨城県常陸大宮市『紙のさと』にて
(2020 年2月17日に菊池正氣様がご逝去されました。生前に賜りましたご指導に深く感謝すると共に心より謹んでお悔やみ申し上げます)
西ノ内紙 「紙衣」の特性を活かしたテキスタイル製品の開発研究
和紙の専門家であられる本学 名誉教授 小山欽也先生と講師 小野文則先生のご指導のもと、本学卒業生 服飾デザイナー小久保亜美氏に協力いただき、西ノ内紙 「紙衣」の特性を活かしたテキスタイル製品の開発研究を行っています。
西ノ内紙『紙のさと』和紙工房にて
茨城県常陸大宮市 西ノ内紙『紙のさと』和紙工房にて 四代目 代表 菊池大輔氏と
染織文化資源保存修復部門
染織文化資源研究部門